フィラリア(犬糸条虫)がどのように感染虫になるのか
犬の体内に産生されたミクロフィラリアが蚊に吸血されて再び犬の体内にどのような過程を経て戻ってくるのか?
蚊は、犬とか人間とか区別して血を吸っているわけじゃないと思っていましたが、蚊にも好みがあるようなんです。
また、ミクロフィラリアも自分たちと相性のいい蚊に吸われるために
行動しているようです。
そのあたりを時系列?で説明してみますね
犬の体内で生まれたミクロフィラリアの数は、2000匹から3000匹ほどになり、それが毎日生まれ続けています。
寄生虫と言うのは、卵を産むと思っていましたが、犬糸条虫というのは子宮があって、幼虫を生んでいるんですよ
生まれたばかりのミクロフィラリアのサイズは0.3o(300μ)くらいです。
成熟虫の寄生場所が肺動脈ですから、生まれたミクロフィラリアも肺動脈から血流に乗って
犬の体の中を流れていきますが、体の中を絶えず流れているわけではなく、肺や肺静脈と
その周辺に集まっていて、蚊が吸血する時間になると、末梢血管に移動します。
この移動する時間なんですが、ミクロフィラリアは中間宿主になる蚊が吸血に来る時間が分かっているようなんです。
定期出現性といって、蚊が吸血に来る日没から夜間にかけて末梢血管に集まることが研究からわかったようです。
犬糸条虫の中間宿主として媒介能力が高い蚊はトウゴウヤブカで次がシナハマダラカ、
能力的には少し劣るけど数で勝負しているアカイエカ・チカイエカやヒトスジシマカがいます。
犬糸条虫の中間宿主になる蚊の情報
体長 | 発生場所 | 好んで吸血 | 活動時間 | |
トウゴウヤブカ | 約6mm | 海岸 | 鹿・牛・犬・人 | 昼間・薄暮 |
シナハマダラカ | 約5.5mm | 水田・湿地・用水路 | 牛・馬・人・大型哺乳類 | 夜間 |
アカイエカ | 約5.5mm | 汚水溜・下水溝・汚水槽・湧水槽 | 鳥類・人 | 夜間 |
チカイエカ | 約5mm | ビル地下の浄化槽・貯水槽・湧水槽 | 鳥類・人 | 昼間・夜間 |
トウゴウヤブカが媒介能力が高いと言われているのに、活動時間が昼間ですよね
ミクロフィラリアが日没から夜間にかけて末梢血管に集まるのは、ちょっと違うのでは?
と思ってしまいました。
蚊の活動時間はあくまでもおおよその時間であって、血を吸いたい時期になれば、
近くに対象になるものがあれば関係ないのかもしれないですね
無事?に蚊の吸血と共に体内に侵入することができたミクロフィラリアは、最初に中腸(消化管のようなもの)に
取り込まれてからマルピーギ管(腎臓のようなところ)に侵入して、変態を行って第一期幼虫(L1)になります。
Larva1(幼虫1)= L1
蚊の体内に入るミクロフィラリアの数ってどのくらいいるのでしょう。
蚊に吸血される犬の体内にいる犬糸条虫成虫の数によってミクロフィラリアの数も違ってきますよね
たくさん寄生されていれば、当然ミクロフィラリアの数もかなりいることになり、
蚊が吸血に来た時には、殺到してしまうのではないでしょか?
一度に、数十匹のミクロフィラリアが吸い込まれてしまうこともあるようなんです。
でも、そうなると蚊のほうが持ちこたえられずに死んでしまいます。
フィラリアを研究している人が蚊を採取して解剖してみたところ、一匹から十数匹と、数はバラバラだったそうです。
同じ場所での採取でそれだけ違っているんですね
と、そのまえに蚊に取り込まれた後、全部が生きて犬に戻っているのか?
蚊に吸引されると、まずは中腸に取り込まれますが、ここで蚊の免疫攻撃を受けます。
蚊だって、異物を取り込めば、自身を守るために免疫が動き出しますよね
この中腸での免疫攻撃から生き残ったミクロフィラリアがマルピーギ管にたどり着いて、第一期幼虫になれるのです。
と言うことは、仲間が攻撃されている間にすり抜けているものが生き残れるってことかしらね
そう考えると、ある程度の数が一緒に取り込まれるのは計算の内ってことになるかな?
この第一期幼虫のときの姿は、成虫の細長い姿からは想像できないずんぐりとしたソーセージのような姿で動きも鈍い。
マルピーギ管の中に侵入して6日ほどで第一回目の脱皮をして第二期幼虫(L2)になり、形は成虫と同じ細長い姿で、動きは活発になっています。
第二期幼虫になって、3日くらいで、第二回目の脱皮を行い第三期幼虫(L3)の感染虫となり、体長は1oくらいになっています。
第三期幼虫になるとマルピーギ管から蚊の頭部種変や口吻内に移動して、蚊が吸血行動をするのを待ちます。
蚊の体内にいる期間は10日から14日ほどと言われていますが、幼虫の成長には気温に左右されるので、もっと日数がかかる場合もあります。
蚊からの脱出方法は、唾液管からと言われていますが、唾液管だけでなく他の方法もあるようなんです。
研究者が顕微鏡で見たところ下唇(かしん)で動いている第三期幼虫がいたそうです。
蚊が吸血するときに下唇(かしん)から犬の皮膚の上に落ち、蚊が吸引のために傷つけた箇所より侵入するのではないかと推測したみたいです。
下唇というのは、吸血するための針や唾液管などを収めておく鞘のようなもので、柔らかいものです。
第3期幼虫は、蚊から犬の筋膜間、皮下組織、脂肪組織などに入り込み、
数日から10日の間に第三回目の脱皮を行い、第4期幼虫になります。
3ヶ月〜4ヶ月くらい皮下組織で成長を待ち、第五期幼虫になると、
静脈系の血管から血管内に侵入し、血流にのって肺動脈に入り込みます。
肺動脈にたどり着いても、まだ、成熟虫とはなっていないので、
ミクロフィラリアを産出するのは6ヶ月〜8ヶ月後になります。
犬の体内に侵入してからすぐに脱皮をして第四期幼虫になるのは、免疫攻撃から少しでも逃れるためです。
第四期幼虫時代は、たえず免疫攻撃をうけていて第五期幼虫にまで成長できるのは、同時期に侵入した幼虫の約30-40%ほどです。
犬糸条虫は雄の方が早熟で約7ヶ月くらいで、雌は約9ヶ月くらいで成長がとまります。
そして、寿命は7年ほどではないかと考えられています。